「空海に導かれて」 岡本光平
空海が、歴史上の偉大な人物になる前は一人の青年であり、喜怒哀楽をともにする一人の同じ人間であったはずです。
人生の岐路や節目において空海は何を選択し、どのような決断をし、そして何が進取の超人空海たらしめたのか、その実像は模糊(もこ)としてはるか雲霧の中の彼方にあります。
しかし、その遺した日本最高峰の筆跡の書からは心の襞(ひだ)や、また文章からはその奥深い思想の片鱗をかいま見ることは可能です。
空海は大学を中退し、命がけで大海を越え、新しい思想哲学を日本に持ち帰る不退転の決意に燃えていました。そのような青年空海に想いを馳せ、導かれるように国内はもとより中国各地の空海が見た同じ風景を訪ね歩き、残影を求めて早くも半世紀が経ちました。
御誕生1250年を記念する今回の作品は、今までに増して大師空海に帰依(きえ)し、奉献する心持ちで制作してきたものです。
ご高覧を賜りたいと存じます。 合掌
■岡本光平プロフィール
・1948年愛知県生まれ。
・全国最年少の17歳で毎日書道展初入選、24歳の時に真言宗仁和寺密教学院書道講師を拝命。20代から空海と日本・朝鮮古代金石文の研究に入る。以後、年月をかけて国内各地はもとより、中国の西安、開封、揚州、紹興など空海ゆかりの土地を巡拝。
・空海「風信帖」の現代訳が、司馬遼太郎の解説とともに高校書道教科書の副読本に採用される。
・36歳で東京の書道団体組織を離脱。
・1988年ソウル耕仁美術館にて初個展。以後、国内外にて200回を越える企画個展を開催。
・2015年四国八十八ヶ所霊場甲山寺の大襖44枚に「般若心経曼荼羅」、並びに漆喰壁書11mの「飛白雲龍図」を揮毫。
・2018年高野山讃岐別院創建100年記念の結縁灌頂の儀式において、約500名の「結縁灌頂歴名」及び「投華得仏諸尊号」を揮毫。別院に永代護持となる。
・2023年6月15日、弘法大師空海御生誕1250年を記念して、高野山讃岐別院の本堂大襖12枚に、3年がかりの「空海渡海疾風怒濤乾坤飛白諸尊号曼荼羅図」を揮毫完成予定。
●主な個展、招待展
・1988年 ECユーロパリアジャパン展招待作家(ベルギー)
・1999年 ライプティヒ国立民族博物館個展(ドイツ)
・2010年 ニューヨーク・ハモンド美術館個展(U.S.A)
・2014年 イェール大学にて講演と実演、作品所蔵(U.S.A)
●主な番組出演
・NHK総合「課外授業 ようこそ先輩」「きよしとこの夜」「みんなで日本GO」
・NHK教育「新日曜美術館」「国宝探訪 ・空海」 「趣味悠々」「美の壺」
・NHK BSプレミアム「空海・至宝と人生」
・TV東京「たけしの誰でもピカソ」
・NHK Eテレ「高校美術」
・NHK BSプレミアム「美の壺 漢字と書 三千年の迷宮」など多数