『私という書き人』
私という独りが個人であるために
筆を執ります。
私は時間と空間を超える
壮大な生命潮流の一滴水となって、
白い紙の上に自らを投げうちます。
私は古典を敬慕し、
古典のなかに現代を見いだし、
現代の中に媚びることのない自我を
問い続けます。
私は謙虚に伝統や先人に学びながらも、
新たな道を切り拓くために
不断の切磋と鍛錬を忘れません。
私は今の私自身の今を一本の線に託し、
利欲を前後載断した
一刹那に生きたいと思います。
私はその瞬間に私という小我を捨離し、
隠れた私の実体に覚醒遭遇して
歓喜に浸ります。
私は作品を作りません。
書いたものが私そのものであり、
等身大の己であることが願望です。
私は常に筆とともにあり、
勇猛心を持って迷妄を捨てた
他力大我の道をめざします。